
1973年に筑摩書房が創刊した隔月刊総合雑誌「終末から」は、1974年10月までのわずか9号で幕を閉じた短命な雑誌です。
参考)終末から - Wikipedia
創刊号は1973年6月30日発行で、A5判という比較的コンパクトな判型を採用しつつ、思想・文学・サブカルチャーを混在させた編集方針が特徴でした。
参考)終末から(隔月刊雑誌) 創刊号(1号)~終刊号(9号) 全9…
編集長は原田奈翁雄が務め、「ガロ」に関わっていた松田哲夫らが編集部に参加していたことから、前衛的な漫画・評論の人脈が色濃く反映されています。
参考)https://rojiura-s.o.oo7.jp/products/Magazine/Syumatsu.html
雑誌「終末から」は、筑摩書房にとって既存の学術色の強い雑誌ラインとは異なる「実験的メディア」として位置づけられていたとされます。
参考)https://da.lib.kobe-u.ac.jp/da/kernel/81012914/81012914.pdf
当時の出版界では、学生運動後の閉塞感や高度経済成長のひずみを背景に、「終末」や「崩壊」をテーマとする文化誌が散見され、その流れの中に「終末から」も位置付けられます。
隔月刊という発行ペースは、長編小説や思想的エッセイをじっくり読ませる設計であり、週刊誌とは異なる持続的な読書体験を志向していました。
創刊号の特集「破滅学入門」は、野坂昭如と編集部による企画で、「世界の終わり」や「個人の破滅」を遊びと批評の両方から扱う、当時としても挑発的なテーマ設定でした。
雑誌名「終末から」は、終末を起点としつつも、その後をどう生きるかを問う逆説的なタイトルであり、社会的不安をポジティブな創造に変換しようとする意図が込められていたと解釈されています。
医療従事者の視点から見れば、「終末」という語は終末期医療を想起させますが、この雑誌では社会や文化の終末を主題とし、生命観・死生観をめぐるラディカルな議論の土台にもなり得る資料と言えます。
神戸大学の機関リポジトリには「雑誌『終末から』(筑摩書房)解題と執筆者一覧」が公開されており、各号の目次と執筆陣が整理されています。
この解題を参照することで、冊子現物が手に入りにくい環境でも、研究・教育目的でコンテンツ構成を俯瞰できる点は、医療人文学や死生学を扱う医療者にとっても有用です。
とくに、終末をめぐる言説が1970年代にどのように語られていたかを歴史的に追うことで、現代の終末期ケアの語りとのギャップや連続性を検討する視点が得られます。
神戸大学リポジトリにある解題・執筆者一覧PDF
雑誌『終末から』(筑摩書房)解題と執筆者一覧
雑誌「終末から」には、田辺聖子、埴谷雄高、つげ義春、赤瀬川原平、井上ひさし、佐々木マキ、水木しげるなど、当時の文学・漫画シーンを代表する作家が多く参加していました。
とくに、つげ義春や水木しげる、赤瀬川原平といった「ガロ」周辺の作家陣は、日常の底に潜む不安や不条理を描くことで知られており、「終末から」というタイトルと響き合う作品群を提供しています。
長編連載としては、井上ひさしの『吉里吉里人』が掲載されており、のちに単行本化される前の貴重な初出媒体としても評価されています。
連載陣の特徴は、純文学・大衆文学・前衛漫画・批評・グラフィックアートが一冊の中に共存している点にあります。
この編集方針は、医療や看護といった専門領域の雑誌と比較すると一見「雑多」に映りますが、多様な視点が同じ「終末」的時代感覚を共有しながら交差する場となっており、人間観の多層性を読み解くうえで示唆的です。
とりわけ、赤瀬川原平の作品群は、患者—医療者関係にも通じる「権威とユーモア」の関係性を逆照射するような視点を含んでおり、医療現場のコミュニケーションを考える際の補助線として読むことも可能です。
また、連載以外にも、エッセイや座談会形式で当時の政治・社会状況を論じる記事が多く掲載されていました。
これらのテキストは、終末期医療や公衆衛生を扱う医療従事者にとって、社会背景や価値観の変遷を理解する手がかりになり得ます。
患者や家族が「世界の終わり」のように感じる瞬間をどう受け止めるかを考える際、1970年代に語られた「終末」像と比較することで、現在の支援のあり方を相対化できるからです。
執筆者一覧と連載構成を確認したい場合は、前述の解題PDFが最も網羅的な一次情報となります。
そこでは各号ごとに執筆者・作品名が一覧化されており、特定の作家の初出や再録を追跡する際にも便利です。
研究論文レベルで作家のキャリアを検討する際には、「終末から」での掲載順序や並びも重要なコンテクストとなるため、医療人文学の読書会などでも参照価値があります。
雑誌「終末から」の表紙は、第2号までは東君平、第3号以降は味戸ケイコが担当し、連続したビジュアル・トーンを作り出していました。
東君平による初期表紙は、一見すると温かみのあるイラストでありながら、どこか不穏な空気や「日常の端がほつれる感覚」を含んでいると評されます。
味戸ケイコによる後期表紙は、繊細な線と抒情的な色彩が特徴で、終末を直接描くのではなく「静かな余白」や「もの言わぬ人形」などを通して感覚的に終末を想起させるアートワークになっています。
誌面レイアウトも、当時の一般的な文芸誌と比べると余白が多く、イラストとテキストの比率が高いことが指摘されています。
本文フォントや組版はオーソドックスながら、見出しのタイポグラフィやカットの挿入位置に実験的な試みが見られ、読者に「読む」というより「体験する」感覚を与える構成になっていました。
医療情報誌に携わる立場から眺めると、「終末から」の誌面設計は、視覚的に負担をかけすぎず、かつ感情喚起を行うレイアウトとして、患者説明資料や院内広報物のデザインにも応用可能なヒントを含んでいます。
また、表紙・目次・本文の間にはしばしば「遊び」の要素が挿入されており、イラストの小ネタやコラム的テキストが、重いテーマを緩衝する役割を果たしていました。
これは、終末期医療における「スピリチュアルペイン」のケアにおいて、ユーモアや軽やかな会話が患者の心理的負担を軽減しうることと、構造的に似た役割を持っています。
医療従事者向けの教育媒体を作る際にも、「重いテーマを扱うからこそデザインとトーンを軽やかにする」というバランス感覚は大きな示唆になるでしょう。
筑摩書房や関連ファンサイトによる表紙・誌面イメージ解説
筑摩書房から発行されていた総合雑誌「終末から」の概要ページ
雑誌「終末から」は現在、新刊では入手できず、古書店やオンラインオークション、フリマサイトでのみ取引されています。
参考)WeP 動画クリエイタープロデュースコスメ 公式サイト
全9号揃いのセットは「70年代伝説の雑誌全巻揃え」として紹介されることもあり、サブカルチャー史・漫画史ファンの間で一定のコレクター需要があります。
創刊号は「破滅学入門」の特集と横尾忠則の付録が話題性を持つため、単品でも比較的高値で取引されやすい傾向があります。
古本市場では、状態(表紙のヤケ、背表紙の傷み、付録の有無)が価格に大きく影響し、付録付きの良好な個体はプレミア価格となることが少なくありません。
一方で、本文に線引きや書き込みがあっても研究用途であれば十分実用的であり、価格も抑えられるため、医療人文学・歴史研究者にとってはむしろ狙い目のコンディションと言えます。
図書館では、国立国会図書館や一部大学図書館に所蔵が確認されており、複写サービス等を活用すれば現物を購入せずとも資料として利用できます。
オンラインオークションの検索キーワードとしては、「終末から」「筑摩書房 終末から」「終末から 創刊号」などが有効で、カテゴリを「本、雑誌」「雑誌(総合・サブカル)」に絞るとヒットしやすくなります。
参考)【2026年最新】Yahoo!オークション -終末から(本、…
医療機関や大学病院の図書室で所蔵を検討する場合、全集や文芸誌と並べるだけでなく、「死生学・人文系医療資料」としてコーナー化すると、医療従事者や学生が手に取りやすくなります。
また、終末期医療のカンファレンスやワークショップで、患者や家族の語りだけでなく、こうした歴史的雑誌を題材にした「読書会」を組み込むと、医療者側の想像力を広げる仕掛けとして機能し得ます。
古本全巻セットの販売情報・価格帯の参考
70年代伝説の雑誌全巻揃え「終末から」創刊号から終刊号9冊
医療現場で「終末」という語が出るとき、多くの場合は終末期医療・ターミナルケアを意味し、診療報酬やガイドラインと結び付きがちです。
参考)https://laboz.jp/nursing-blog-guide-seo-writing-techniqu/
一方、「終末から」という雑誌タイトルが指し示す「終末」は、社会・文化・価値観の終焉をめぐる広義の概念であり、このギャップを意識することで、医療従事者は自らの言葉遣いの狭さに気づくきっかけを得られます。
例えば、患者や家族が「もう私の人生は終わりだ」と表現するとき、それは医学的な終末期(予後)だけでなく、社会的役割や家族関係の崩壊感覚を含んでいることが少なくありません。
「終末から」の誌面では、文学や漫画を通して、個人が感じる「終末」の主観的体験が多様なかたちで表現されており、医療者がこうした表現に触れることは、患者の語りを豊かに受け止める準備運動になります。
とくに、つげ義春作品に見られるような、言語化しきれない不安や倦怠の描写は、うつ病や慢性疾患患者が訴える「説明しがたいしんどさ」と構造的に重なります。
終末期ケアの現場では、こうした文学的表現を引用しながら、患者の自己理解を助けるリフレクションの場を作ることも一つのアプローチとなり得るでしょう。
また、雑誌「終末から」が短命に終わった事実自体も、「終末」をめぐる一つのメタ・ストーリーとして読むことが可能です。
出版不況や読者層の限定性といった現実的要因により、わずか9号で終刊となったことは、「終末」を語るメディア自身もまた終末に直面するというアイロニーを内包しています。
医療従事者がメディアや教育コンテンツを企画する際にも、「誰のための終末なのか」「どの程度の読者数・利用者数を想定するのか」といった現実条件を踏まえつつ、それでも語り継ぐ価値のあるテーマを選び取る必要があります。
こうした観点から、「終末から」は単なるサブカル雑誌ではなく、「終末」をキーワードに現代医療やケアのあり方を再考するための、意外な教材候補として再発見されつつあります。
終末期医療や緩和ケアに関心のある医師・看護師・医療ソーシャルワーカーが、チームで一冊を読み解き、そこから現場での語り方や患者への説明の工夫を議論する読書会を開くと、学会発表や院内研修にもつながる深い議論が生まれるはずです。
「終末から 雑誌」という一見ニッチなテーマを扱うこと自体が、医療と文化の境界を越えて学び合う契機になり得るのではないでしょうか。
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