
グラム陽性菌は、グラム染色で紫色に染まる細菌群であり、厚いペプチドグリカン層を特徴とする細胞壁構造を持ちます。
参考)グラム陽性菌 - Wikipedia
このグラム陽性菌の一覧を俯瞰する際、まず球形のグラム陽性球菌と棒状のグラム陽性桿菌に大きく分類することが基本です。
参考)https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/16-%E6%84%9F%E6%9F%93%E7%97%87/%E7%B4%B0%E8%8F%8C%E6%84%9F%E6%9F%93%E7%97%87-%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%A0%E9%99%BD%E6%80%A7%E7%B4%B0%E8%8F%8C/%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%A0%E9%99%BD%E6%80%A7%E7%B4%B0%E8%8F%8C%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81
臨床的に重要なグラム陽性球菌として、ブドウ球菌属(Staphylococcus)、レンサ球菌属(Streptococcus)、腸球菌属(Enterococcus)が代表的であり、医療関連感染症や市中感染の主要な原因となります。
一方、グラム陽性桿菌には、芽胞形成能を持つBacillus属やClostridium属、非芽胞形成のListeria属、Corynebacterium属、Propionibacterium(Cutibacterium)属などが含まれ、比較的まれでも重篤な感染症を引き起こすケースが少なくありません。
参考)https://jsv.umin.jp/microbiology/main_019.htm
典型的な教科書では、グラム陽性菌一覧を「好気性・通性嫌気性」と「嫌気性」、さらに「芽胞形成の有無」で分類することが多く、臨床現場でも培養同定レポートの読み解きや治療薬の絞り込みに直接結びつきます。
参考)Table: 一般的な病原性細菌の分類-MSDマニュアル プ…
このような構造を理解したうえでグラム陽性菌の一覧を眺めると、単なる羅列ではなく、「どの部位で・どの背景の患者に・どのような菌が出やすいか」という臨床思考の枠組みとして活用しやすくなります。
グラム陽性球菌のうち、もっとも頻度が高く、かつ多様な病態を引き起こすのが黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)です。
参考)グラム陽性菌、グラム陰性菌にはどのような菌が含まれますか? …
S. aureusは皮膚・鼻腔などに常在し、蜂窩織炎や膿瘍から肺炎、菌血症、感染性心内膜炎まで広いスペクトラムを持ち、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の存在により、βラクタム系抗菌薬選択にも常に注意が必要です。
コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CoNS:Staphylococcus epidermidisなど)は、血管内留置カテーテルや人工関節といった医療デバイス関連感染で問題となり、バイオフィルム形成能のため抜去が治療の鍵となる場面が少なくありません。
レンサ球菌(Streptococcus)は、β溶血性レンサ球菌(S. pyogenes)、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、ビリダンス群レンサ球菌などに分類され、それぞれ咽頭炎・猩紅熱、肺炎・髄膜炎、感染性心内膜炎など特徴的な病態を呈します。
腸球菌属(Enterococcus faecalis, Enterococcus faeciumなど)は、尿路感染症や腹腔内感染症で検出されるほか、医療関連菌血症の原因となり、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)の出現は院内感染対策上の大きな課題です。
一般向けの一覧では軽く扱われがちですが、医療従事者向けには、各グラム陽性球菌が示す耐性パターン(ペニシリン耐性肺炎球菌、MRSA、VREなど)を併記した一覧が、実臨床での意思決定に直結する有用な情報となります。
Bacillus anthracis(炭疽菌)は自然界ではまれな病原体ですが、バイオテロの観点からもグラム陽性桿菌一覧の中で特別な位置づけがあり、炭疽皮膚症・吸入炭疽など重篤な病態を引き起こします。
Bacillus cereusは食中毒菌として知られ、嘔吐型(セレウリド産生)と下痢型(エンテロトキシン産生)という異なる毒素型病態を示す点が、単純な「桿菌の一種」という理解を超えた臨床的な要点です。
Listeria monocytogenesは、妊婦・高齢者・免疫不全患者での敗血症や髄膜炎の原因となる食品媒介性感染症の起因菌で、セファロスポリン系が無効であるという点が抗菌薬選択上の重要な「落とし穴」として知られています。
Corynebacterium diphtheriaeによるジフテリアは、日本ではワクチン普及によりまれになっていますが、Corynebacterium striatumなど非ジフテリア性コリネバクテリウムが、長期入院患者のデバイス関連感染で検出されるケースが増えているとの報告もあり、「常在菌」と安易に切り捨てられない存在になりつつあります。
グラム陽性菌の一覧は、単に暗記するだけでなく、「臨床像」や「背景因子」と組み合わせて、起因菌候補を絞り込むためのツールとして利用することが重要です。
たとえば、市中発症の肺炎であれば肺炎球菌やレジオネラなどが念頭に置かれますが、高齢者施設入所者や誤嚥リスクが高い患者では、グラム陽性球菌に加え嫌気性菌が関与する可能性も考慮されます。
皮膚・軟部組織感染では黄色ブドウ球菌やβ溶血性レンサ球菌が中心となる一方、糖尿病足潰瘍や褥瘡の深部感染では、グラム陽性菌とグラム陰性桿菌、嫌気性菌が混在する多菌種感染になることが少なくありません。
抗菌薬選択の観点からは、「グラム陽性球菌中心か、グラム陰性桿菌も想定すべきか」「嫌気性菌カバーは必要か」という軸に加えて、MRSAやVREなど耐性グラム陽性菌の関与をどこまで疑うかが鍵になります。
たとえば、重症市中肺炎でもMRSAリスクが低ければ、セフトリアキソン+マクロライドといったレジメンで十分なことが多い一方、インフルエンザ後肺炎や透析患者、院内発症肺炎ではMRSAカバーとしてバンコマイシンやリネゾリドの追加を検討します。
さらに、Listeria monocytogenesが疑われる高齢者の髄膜炎では、セフトリアキソン単独ではカバーが不十分なため、アンピシリンを併用するというように、グラム陽性菌一覧に含まれる「例外的なカバー範囲」を頭に入れておくことが重要です。
皮膚常在菌としては、Staphylococcus epidermidisやCutibacterium acnes(旧Propionibacterium acnes)などのグラム陽性菌が知られ、これらが産生する抗菌ペプチドや代謝産物は、黄色ブドウ球菌などの病原性グラム陽性菌の過剰増殖を抑える役割を持つ可能性が指摘されています。
このように、グラム陽性菌一覧には「病原体」として名を連ねる菌種だけでなく、「常在菌としての顔」を併せ持つ菌が多く、検体の採取部位や臨床症状を踏まえなければ、「単なるコンタミか起因菌か」の判断を誤りかねません。
皮膚や腸内常在菌叢とグラム陽性菌の関係について詳説した総説として、腸内グラム陽性細菌の分類と機能に焦点を当てた日本語論文があります。
グラム陽性菌の種類と代表的感染症、抗菌薬の概要を整理する際には、日本語の感染症解説サイトも有用です。
グラム陽性細菌の概要(MSDマニュアル家庭版)
代表的なグラム陽性菌の一覧や分類表を確認したい場合には、医療者向けに整理された国内サイトも参考になります。
グラム陽性菌一覧と種類別分類(薬剤情報まとめ)
【第3類医薬品】ハイチオールCプラス2 360錠