薬物代謝 肝臓 の仕組みと臨床的意義

薬物代謝 肝臓における第1相・第2相反応のメカニズム、CYP酵素の役割、遺伝子多型による個人差、グレープフルーツとの相互作用など、医療従事者が知っておくべき薬物代謝の基礎と臨床的意義を解説します。

薬物代謝 肝臓 の基本メカニズム

薬物代謝 肝臓 の基本メカニズム
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肝臓は生体内の化学工場

薬物は小腸から吸収され門脈を経て肝臓へ。ここで一部が代謝され、全身循環に入る薬物量が調整されます。

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薬物代謝酵素の働き

主に肝細胞内のミクロソームに存在する酵素が、薬物を親水性の高い代謝物に変換し排泄を促進します。

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バイオアベイラビリティの制御

経口投与された薬物は消化管・肝臓での代謝により生物学的利用能が決定され、投与量設計の基準となります。


肝臓での薬物代謝は、主に肝細胞内にあるミクロソームで行われ、これらを行う酵素を薬物代謝酵素と呼びます。 薬物代謝酵素は薬物などの投与により発現誘導されたり、薬物に阻害されたりすることがあり、薬物相互作用の原因となることが多いです。


参考)https://www.pharm.or.jp/words/word00384.html


薬物代謝 肝臓 の第1相反応と第2相反応



薬物代謝は、第1相および第2相の反応に分類され、これらが相互に協調して薬物の代謝と解毒を行います。



第1相反応では、対象物質の分子量は大きく変化しないか、あるいは分解により低減化します。 具体的には、エステルなどの加水分解、シトクロムP450(CYP)による酸化反応、還元反応などが含まれます。



第1相反応の主な役割は、薬物分子に機能的に反応性のある極性基(ヒドロキシル基など)を導入することです。 この形質転換は主に肝臓で起こり、細胞の親油性小胞体に位置するヘモタンパク質のシトクロムP450系によって促進されます。


参考)https://www.jove.com/ja/science-education/v/14409/drug-metabolism-phase-i-reactions


CYPによる酸化反応は特に重要で、CYP酵素は生物種ごとに数十種あり、それぞれ基質特異性が異なります。 CYPのことを限定して薬物代謝酵素と呼ぶ場合もあるほど、薬物代謝におけるCYPの役割は中心的なものです。



第2相反応は抱合反応で、硫酸、酢酸、グルタチオン、グルクロン酸など内因性物質を付加し分子量は大きくなります。 産生物はより極性が大きくなり、腎(尿)や肝(胆汁)により速やかに排泄されます。



肝臓は人類中含穀胱甘肽(Glutathion, 略称GSH)が最も高い器官であり、これは肝臓の解毒能力と正比例します。 GSHは半胱氨酸(cysteine)、穀胺酸(glutamic acid)および甘胺酸(glycine)から形成されたγ-Glu-Cys-Glyで、毒性の薬物分子に付着して解毒作用を行います。


参考)肝臟之藥物轉化機制(Drug Metabolism)


薬物代謝 肝臓 におけるシトクロムP450(CYP)酵素の役割

ヒトでは約50種類ほどのCYPがあることがわかっていますが、薬の代謝に関係するCYPは、大きく4つのファミリー(CYP1、CYP2、CYP3、CYP4)に分類されます。 特にCYP3A4は、カルシウム拮抗薬など多くの薬物を代謝する重要な酵素です。


参考)遺伝子多型と薬の代謝の関係についてのデータベースを初公開|東…


CYPの阻害機構には、ヘム鉄に窒素原子(N)が配位することで起こるものがあります。 この阻害作用により、薬物の血中濃度が上昇し、薬物相互作用や副作用のリスクが高まります。


参考)【 CYP阻害 と 化学構造式 】薬と柑橘類に注意?!不可逆…


薬物代謝の第I相反応において、モノオキシゲナーゼP450サイクルは、親薬物を酸化し、ヒドロキシル基を導入する重要な役割を果たします。 酸化型のP450は最初に親薬物と結合し、二剤-薬物複合体を形成します。 次に、この複合体はNADPH-P450レダクターゼによって還元され、分子状酸素と別の電子を使用して「活性酸素」-P450-基質複合体を形成します。



薬物代謝 肝臓 と遺伝子多型による個人差

肝・消化管に存在する薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP)の活性には、個人差があることが知られています。 この個人差は主に、遺伝子多型に起因すると考えられています。


参考)CYPの遺伝子多型が薬効や副作用に影響:日経DI


薬の効き目と密接に関わっているのが肝臓の代謝機能です。 薬は主に肝臓で分解(代謝)されますが、この代謝の速さは個人個人で違いがあり、薬の効果や副作用の出やすさに関係しています。



ToMMo(東北メディカル・メガバンク機構)では、日本人全ゲノムリファレンスパネルを活用し、2018年から薬物代謝酵素CYP2B6、CYP3A4、CYP2C9、CYP1A2などの分子種の遺伝子多型について、酵素機能に与える影響とメカニズムを解明しています。



大規模な日本人集団の全ゲノム解析を活用することで、これまで見落とされていたCYP分子種の遺伝子多型が多数同定されました。 これらの遺伝子多型には日本人特有の体内薬物動態変動を予測する遺伝子マーカーが存在する可能性があります。



ワルファリン投与量の人種差に関しては、VKORC1の1173 C>T変異の頻度が日本人で極めて高く、ワルファリン感受性を高める原因となっていることが明らかとなりました。 一方、CYP2C9の活性低下に関係する変異アレル頻度は日本人では低いため、ワルファリン投与量の人種差を説明するものではないことが明らかとなりました。


参考)薬効及び副作用発現の人種差に関わる遺伝子多型に関する研究


白人ではCYP2C9のジェノタイピングは投与量と副作用の予測に有用であるが、アジア人と黒人においては投与量の予測には有用性が低いという研究結果もあります。 このため、人種差を考慮した薬物治療の個別化が重要となります。



薬物代謝 肝臓 とグレープフルーツによる相互作用

グレープフルーツと薬物の相互作用は、医療従事者が特に注意すべき重要なトピックです。 グレープフルーツはCYP3A4を阻害するため、薬物の血中濃度は上昇します。


参考)グレープフルーツと薬物の相互作用 - 「 健康食品 」の安全…


カルシウム拮抗薬を服用している間はグレープフルーツを摂ってはいけません。 グレープフルーツジュースの阻害作用は3~4日間続くと報告されており、注意が必要です。


参考)https://chuo.kcho.jp/app/wp-content/uploads/2022/03/NStimes57.pdf


なお、グレープフルーツによる阻害作用は経口投与した場合に限り発現するため、静脈内注射に関しては考えなくて良いとされています。 CYP3A4は肝臓や小腸に存在しますが、通常量のグレープフルーツだと小腸のみで阻害作用を発揮し、肝臓での代謝には影響を与えないと臨床試験でも証明されています。



しかし、多量のグレープフルーツを長期間にわたって摂取した場合は、肝臓にも影響を与える可能性があり、静脈内投与でも注意が必要です。 因みにカルシウム拮抗薬でも全てがグレープフルーツに影響される訳ではありませんし、免疫抑制剤のシクロスポリンなどもCYP3A4で代謝されます。



薬物代謝 肝臓 の臨床的意義と個別化医療への応用

薬物の応答性、副作用には大きな個人差が存在します。 近年、薬物代謝能と遺伝的素因が研究され、酸化的薬物代謝酵素の遺伝的多型、人種較差が研究され、多くの薬物の代謝酵素(特にチトクロムP450)で遺伝的変異が発見されました。


参考)肝代謝酵素チトクロームP450遺伝的多型と臨床的意義 (臨床…


日本人においてこの遺伝的多型が表現型(代謝活性)の低下に結びつく遺伝子変異はそれほど多くありません。 本稿に記載された遺伝的多型を習熟し、臨床で検査しやすい簡便な表現型検査を行うことで、よりpatient orientedな薬物治療が可能となります。



肝臓は豊富な予備能と再生能を有しており、障害を受けても速やかに元の形態へ再生しますが、障害が予備能を超えた場合には全身への代謝や血流などに影響を及ぼします。 肝細胞量の減少は代謝や解毒機能、タンパク合成能の低下を引き起こし、黄疸や肝性脳症、低アルブミン血症による腹水・浮腫、凝固異常などが生じます。


参考)肝障害時の薬物動態の考え方 (薬局 71巻13号)


肝障害時の薬物代謝能を精度よく表すバイオマーカーがない現状では、肝障害時の薬物動態の試験の観測値のデータを重視し、かつそのデータも限界がある点を理解した上で、薬物および患者個別に検討し、投与後は慎重にモニターすることが肝要です。



MSDマニュアル 薬物代謝 - 臨床薬理学
権威ある臨床薬理学の参考資料。薬物代謝の基本メカニズムと臨床的意義を解説。


日本薬学会 薬物代謝
薬物代謝の定義と第1相・第2相反応の詳細な説明。


東北メディカル・メガバンク機構 遺伝子多型と薬の代謝
日本人のCYP遺伝子多型と薬物代謝の個人差に関する最新研究。

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