あなたの150判定、随時採血だと見逃しです。

トリグリセリド(中性脂肪)の基準値は、国試や実習で必ず問われる項目です。
代表的なゴロは「脂肪は困る。一番困る。」というものです。
「困る」を数字の「50」に変換し、「一番」を「1」、続く「困る」を再度「50」として、健常者のTG基準値50〜150mg/dLを導きます。
つまり150mg/dL以上が高トリグリセリド血症、というわけですね。
このゴロは空腹時採血を前提にした基準です。
短時間で数値の枠組みを把握できるので、忙しい実習中や当直前の確認にも便利です
脂質異常症の診断基準を語呂合わせでまとめた解説。LDL・HDL・TGの基準値をセットで覚えたい人向けです。
先ほどのゴロは、空腹時採血の150mg/dLという数字を前提にしています。
しかし実際の外来では、必ずしも空腹時に採血できるとは限りません。
2022年版の動脈硬化性疾患予防ガイドラインでは、随時(非空腹時)採血の場合、TGが175mg/dL以上で高トリグリセリド血症と判定する基準が明記されています。
150という数字だけを覚えていると、随時採血の患者データを見た瞬間に判断を誤るリスクがあります。
150か175か、どちらの基準を使うべきか迷った経験はありませんか?
採血条件を確認してから数値を評価する、これが原則です。
電子カルテの採血オーダー画面に「空腹時/随時」の入力欄があるクリニックなら、そこを一度確認するだけで判断ミスを防げます
動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版の要約資料。空腹時・随時それぞれのTG基準値の根拠が確認できます。
150mg/dLという数値だけ見ても、体感としてピンとこない人も多いはずです。
例えるなら、ペットボトル1本(500ml)の水に対して、小さじ半分弱の油が血液中に溶け込んでいる状態に近いイメージです。
わずかな量でも血管への負担は無視できません。
TGが150mg/dLを超えると、メタボリックシンドロームの診断項目にも該当してきます。
さらに500mg/dLを超えると急性膵炎のリスクが急上昇するという報告もあります。
数値が上がるほどリスクも跳ね上がる、ということですね。
健診結果の判定欄だけでなく、実測値そのものをカルテで確認する習慣をつけておくと、境界域の患者を見逃しにくくなります。
TGだけでなく、LDLコレステロールやHDLコレステロールにもそれぞれゴロが存在します。
「(標高の)高い島で(QOLの)低い一生」というゴロでは、HDL40mg/dL未満、LDL140mg/dL以上という基準を同時に覚えられます。
TGのゴロと組み合わせれば、脂質異常症の3項目をまとめて記憶できる形になります。
これは使えそうです。
ただし各ゴロは空腹時基準を前提に作られているため、随時採血データにそのまま適用しないよう注意が必要です。
複数のゴロを覚える際は、必ず「どの採血条件を前提にしているか」をメモしておくと、後から見返したときの混乱を防げます。
多くの解説記事はゴロの紹介止まりですが、実務では「誰にどう説明するか」まで考える必要があります。
例えば患者向け説明では、150mg/dLという数字よりも「揚げ物や飲酒後は一時的に上がりやすい」という文脈を添えたほうが理解されやすい傾向があります。
一方、研修医や新人スタッフへの指導では、ゴロで数値を覚えさせたうえで、随時採血の175mg/dLという例外を必ずセットで伝えることが重要です。
数字だけ教えると、条件を無視した誤判定につながりかねません。
ゴロは記憶の入口として優秀ですが、判定の根拠までは教えてくれません。
だからこそ、ゴロ+ガイドラインの根拠、という二段構えで指導する体制が望ましいといえます。
院内研修の資料作成やチェックリスト整備にこの視点を取り入れると、若手スタッフの判定ミスを減らす一助になります。
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