メルカプトプリンはメルカプトプリン水和物として流通し、薬効分類上は代謝拮抗薬です。 細胞内ではチオイノシン酸(TIMP)へ変換され、IMPからAMP・GMPが作られる流れを抑えてプリンヌクレオチド生合成を阻害します。 その結果、DNAとRNAの合成が妨げられ、増殖の速い白血病細胞だけでなく免疫細胞の増殖も抑えられます。 臨床では急性白血病、慢性骨髄性白血病に用いられ、免疫抑制作用を背景に炎症性腸疾患で言及されることもあります。
メルカプトプリンは体内でキサンチンオキシダーゼなどの代謝を受けるため、代謝阻害薬との相互作用が重要です。 添付文書上、フェブキソスタットとトピロキソスタットは併用禁忌で、骨髄抑制増強のリスクがあります。 アロプリノールは併用注意で、通常量の1/3〜1/4への減量が必要とされています。 さらに、不活化ワクチンの免疫原性低下や、アミノサリチル酸誘導体によるTPMT阻害も実務上の確認点です。
重大な副作用の中心は骨髄抑制で、汎血球減少、無顆粒球症、白血球減少、血小板減少、貧血が挙げられます。 その他の副作用として、肝障害、黄疸、AST・ALT上昇、血尿、乏尿、食欲不振、悪心、嘔吐、下痢、発疹、膵炎が知られています。 重要な基本的注意として、血液検査だけでなく肝機能・腎機能も頻回に確認し、異常時は減量や休薬を検討します。 長期投与では副作用が遷延しやすく、感染症や出血傾向の見逃しを防ぐ観察が必要です。
NUDT15遺伝子多型は、メルカプトプリンの耐容性を大きく左右する重要因子です。 添付文書では、NUDT15 Arg139Cys多型を持つ患者で白血球減少の可能性が高くなるとされ、日本人ではCys/Cysが約1%、Arg/CysやCys/Hisが約20%と記載されています。 これは「投与してから様子を見る」だけでは不十分で、投与前の説明、初期用量の調整、早期の血算モニタリングを組み合わせる必要があることを意味します。 近年のチオプリン実務では、薬物動態だけでなく遺伝要因を含めて安全域を設計する視点が欠かせません。
小児では、骨髄抑制だけでなく低血糖への注意が近年強まっています。 海外の安全性情報では、メルカプトプリン製剤による小児低血糖が取り上げられ、日本の電子添文にも注意喚起が反映されています。 とくに低年齢児や低BMI、食事摂取量が不安定な場面では、倦怠感や冷汗を「薬剤性」と結びつける視点が役立ちます。 白血球数だけを追うのではなく、血糖変動まで含めて観察することが、見落としを減らす実務的な工夫です。
製品情報では、ロイケリン散10%がメルカプトプリン水和物散として扱われ、劇薬・処方箋医薬品に区分されています。 用法は成人で通常1日2〜3mg/kgを経口投与し、緩解後は減量して継続します。 また、調剤時には微粉末の吸入を避ける注意があり、経管投与ではチューブ通過性が確認されています。 参考として、製薬企業のインタビューフォームには、代謝、相互作用、海外情報、配合変化などの実務に役立つ情報がまとまっています。
参考リンクの見どころ:作用機序、相互作用、NUDT15、海外安全性情報がまとまっています。
参考リンクの見どころ:日本の添付文書情報を確認できます。
参考リンクの見どころ:NUDT15多型とチオプリン製剤の実務的な注意点が整理されています。