歩行障害で受診した高齢患者が、実はクラッベ病だったという例が報告されています。

クラッベ病というと、多くの医療従事者は乳児期に急速に進行し死に至る疾患というイメージを持っているのではないでしょうか。実際には9歳以降に精神症状で発症し、5から10年という長い経過をかけてゆっくり進行する成人型が存在します。
参考)クラッベ(Krabbe)病 概要 - 小児慢性特定疾病情報セ…
歩行障害だけで発症し、認知障害や視力障害を伴わないまま経過する例もあります。
進行がゆっくりということですね。
そのため診断までに数年単位の時間がかかることも珍しくなく、患者本人にとっては原因不明の症状に長期間悩まされるという大きなデメリットにつながります。医療従事者としては、若年~中年期に緩徐進行性の歩行障害を診た際、鑑別リストにクラッベ病を加えておくことが望ましいでしょう。
典型的な錐体路障害を伴わないケースがあるということですね。
クラッベ病はリソソーム酵素であるガラクトセレブロシダーゼ(GALC)の欠損によって発症します。この酵素が働かないと、髄鞘(ミエリン)の材料が神経毒性を持つサイコシンという物質に変換され、神経細胞を傷つけていきます。
酵素の働きが完全に失われるのではなく、部分的に残存している点が成人型の特徴の一つです。日本人の成人型GLD患者5例のGALC遺伝子解析では、変異の位置が乳幼児型とは異なりN末端やC末端に集まる傾向が認められ、変異部位の違いが臨床症状の重症度を左右すると考えられています。
つまり変異の場所次第で発症年齢や進行速度が変わるということです。
酵素活性がわずかに残ることで、乳児型のように生後数か月で急激に悪化するのではなく、数十年かけてゆっくり神経障害が進むケースが生まれます。この分子レベルの違いを理解しておくと、患者や家族への説明時に「なぜ同じ病気でここまで経過が違うのか」を納得してもらいやすくなります。
クラッベ病の診断には白血球や皮膚細胞の酵素活性測定、あるいはDNA解析が用いられます。しかし成人発症例は症例数自体が少なく、一般的な神経内科クリニックでは酵素活性測定や遺伝子解析までの検査体制が整っていないことも多いのが実情です。
厚生労働科学研究のライソゾーム病研究班では、医師向けにクラッベ病を含むライソゾーム病の診療情報を公開しており、専門施設への紹介基準や検査の進め方が参考になります。難治性の緩徐進行性神経症状で診断がつかない患者を担当している場合は、こうした専門情報サイトで最新の診断フローを確認し、必要に応じて専門施設への紹介を検討するという行動が現実的な対応です。
参考)クラッベ病
ライソゾーム病に関して(各論)医師向けクラッベ病 - 厚生労働科学研究班による診断・治療情報
一般的な教育や参考書では乳児型クラッベ病の情報が中心で、成人発症型は情報量自体が少ないというギャップがあります。この情報格差こそが、成人発症例の診断遅延を招く一因になっていると考えられます。
若年期以降に発症する緩徐進行性の運動障害を診た際、末梢神経障害、錐体路障害、認知機能低下という3つの症状パターンの組み合わせ方に注目することが独自の着眼点になります。全ての症状が揃わない非典型例こそ、実はクラッベ病の可能性を疑うべきサインかもしれません。
症状の組み合わせに注目することが大切ですね。
日常診療で「原因不明の緩徐進行性神経症状」に遭遇した際は、患者の年齢だけで乳児疾患を除外せず、GALC遺伝子検査という選択肢を頭の片隅に置いておくことが、見逃しを防ぐ具体的な一歩になります。
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