
AST(GOT)とALT(GPT)は肝細胞の障害をみる代表的な酵素です。ASTは肝臓だけでなく心筋や骨格筋にも存在するため、ALTのほうが肝臓特異性が高いとされています。基準値は多くの検査機関でASTが8~38 IU/L、ALTが4~43 IU/L、人間ドック基準では30 U/L以下と設定されています。
参考)肝機能検査の数値の見方|AST・ALT・γ-GTP・ALP・…
ALTが30 U/Lを超えた場合、日本肝臓学会の「奈良宣言2023」では、かかりつけ医等を受診して原因を調べることが勧められています。これは、ALTの高値が非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)や慢性肝炎、アルコール性肝障害などの早期発見につながるからです。
金沢消化器内科・内視鏡クリニック 肝機能検査の数値の見方|AST・ALT・γ-GTP・ALP・ビリルビン
虎の門病院 肝臓内科 監修 血液検査で「肝臓」を知る - 種類は?基準値は?何がわかるの?
数値の組み合わせによる解釈のポイント。
激しい運動や筋肉疾患でもASTが上昇するため、CK(クレアチンキナーゼ)を併せて確認すると肝臓由来かどうかの鑑別に役立ちます。
参考)https://www.mrso.jp/colorda/az/447/
γ-GTP(γ-GT)、ALP(アルカリホスファターゼ)、ビリルビンは胆汁の流れや胆道系の異常を反映する項目です。γ-GTPは肝臓の解毒作用に関わる酵素で、過剰なアルコール摂取、肥満、薬剤などで上昇します。基準値は男性79 U/L以下、女性48 U/L以下、人間ドック基準では50 U/L以下です。
ALPは肝臓、骨、腸、腎臓など多くの臓器に存在し、胆道の閉塞や胆汁うっ滞で上昇します。基準値は102~338 U/L(検査機関により異なります)。γ-GTP・ALP・ビリルビンが同時に上昇している場合、胆石や胆管炎、胆道がんなどの胆道系疾患を疑う必要があります。
ビリルビンは古くなった赤血球が破壊されるときに作られる黄色い色素で、肝臓で処理され胆道から排出されます。総ビリルビンの基準値は0.2~1.2 mg/dLです。直接ビリルビンと間接ビリルビンを分けて測定することで、黄疸の原因が肝細胞障害か胆道閉塞かの鑑別が可能になります。
意外な事実として、γ-GTPだけが上昇している場合、必ずしも飲酒が原因とは限りません。脂肪肝、薬やサプリメント、胆道系の異常も確認する必要があります。また、長期間の薬の服用でも数値が高くなることがあります。
アルブミンと血小板は肝臓の合成能や慢性肝疾患の進行を評価する重要な指標です。アルブミンは主に肝臓で合成されるタンパク質で、肝機能が低下すると減少します。基準値は3.8~5.3 g/dL、人間ドック基準では3.9 g/dL以下が基準下限です。
血小板は出血を止める働きを持つ血液成分で、肝臓の線維化が進むと破壊される血小板が増加し、血小板数が減少します。基準値は14~34万/μLで、10万/μL以下の場合、肝硬変の可能性が高くなります。
慢性肝疾患の評価では、以下の組み合わせが重要です。
肝臓の線維化をみる追加検査として、ヒアルロン酸(基準値50 ng/mL以下)、Ⅳ型コラーゲン7S(5.0 ng/mL以下)、M2BPGi(1.0未満)などがあります。これらの数値を組み合わせることで、非侵襲的に肝線維化の進行度を評価できます。
倉敷中央病院方式では、肝機能検査の結果を「肝細胞障害型」「胆汁うっ滞型」「肝機能低下型」の3つのパターンに分類し、それぞれに対応する追加検査や画像診断を提案しています。このアプローチにより、原因疾患の早期発見と適切な治療開始が可能になります。
参考)肝機能障害を指摘された方へ|検診結果の見方|東京千住・尚視会…
倉敷中央病院方式の解釈フロー。
1. 肝細胞障害型(AST・ALT優位):脂肪肝、肝炎ウイルス、アルコール、薬剤を疑う
- 追加検査:肝炎ウイルスマーカー、腹部エコー、FibroScan
2. 胆汁うっ滞型(γ-GTP・ALP・ビリルビン優位):胆道系疾患、原発性胆汁性肝硬変を疑う
- 追加検査:腹部エコー、CT、AMA(抗ミトコンドリア抗体)
3. 肝機能低下型(アルブミン低下、血小板減少、PT延長):肝硬変、肝がんを疑う
- 追加検査:AFP、PIVKA-II、腹部造影CT、肝生検
この方式の独自性は、単一の数値ではなく複数の項目を組み合わせてパターンを特定し、次のステップを明確に提示する点にあります。医療従事者が健診結果を解釈する際に、迅速かつ正確な判断を支援します。
東京千住・尚視会クリニック 健診プラザ 肝機能障害を指摘された方へ|検診結果の見方
肝機能検査で異常を指摘された場合、どこから受診すべきか、どの追加検査が必要か、医療従事者として明確な指針を持つことが重要です。受診の目安と追加検査の選び方を以下に示します。
受診の目安。
追加検査の選び方。
受診時に持参すべきもの。
肝機能検査の結果を正しく理解するためのポイント - Colorda
肝機能検査(LFT):肝臓パネルの読み方
肝機能検査の数値を正しく解釈するためには、単一の数値だけでなく、複数の項目の組み合わせや過去からの変化をみることが不可欠です。AST・ALTは肝細胞の障害、γ-GTP・ALP・ビリルビンは胆汁の流れ、アルブミン・血小板は肝臓の合成能や線維化を反映します。
異常値を指摘された場合、原因を特定するために飲酒量、服薬内容、体重、血糖・脂質、腹部エコー所見などを総合的に評価する必要があります。早期の受診と適切な追加検査により、肝疾患の早期発見と治療開始が可能になります。
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