
呼吸器系は、空気の通り道である気道とガス交換を行う肺胞で構成されています。この気道は、喉頭を境目として上気道と下気道に明確に区分されます。
上気道は、鼻腔・咽頭・喉頭から構成される呼吸器系の上部を指します。具体的には、鼻の内部である鼻腔、鼻の奥から食道に至るまでの咽頭、そしてのどぼとけにある喉頭までが含まれます。つまり、鼻から声帯までの部分が上気道に該当します。
参考)呼吸器系の全体像
一方、下気道は気管・気管支・細気管支・肺胞から構成される呼吸器系の下部を指します。喉頭から肺まで続く細長い空気の通り道である気管(10~11cm)が左右の肺に枝分かれして気管支となり、その先の細い部分が細気管支、そして気管支の先端に肺胞があります。
この境界区分は、国家試験でも頻出の重要事項であり、呼吸器感染症の病態理解や臨床現場での気道管理において極めて重要です。
上気道と下気道の境界を形成する喉頭は、複数の軟骨で構成されています。その中で最も重要なのが輪状軟骨です。
参考)喉頭・気管の形成 – 京都大学 医学研究科 人間…
輪状軟骨は喉頭下端に位置し、喉頭腔の全周を囲む指環状の軟骨です。前方部分を輪状軟骨弓部、後方部分を輪状軟骨板と呼び、下方は輪状気管靱帯を介して第1気管軟骨に連なっています。
喉頭を構成する大型の軟骨は、下から輪状軟骨、甲状軟骨、舌骨の3つです。輪状軟骨は気道の周囲を一周している環状の軟骨で、気道確保のために重要な役割を果たします。甲状軟骨は喉頭軟骨の中で最大の軟骨で、成人男性では前方で鋭的に突出し喉頭隆起(いわゆる「のどぼとけ」)として触知できます。
これらの軟骨は硝子軟骨であり、20〜30歳に至ると骨化しますが、思春期以前の若年者では軟骨の性状のままです。
声帯は、輪状軟骨の後方に突出する披裂軟骨(左右で2本)と輪状骨の上縁をふさぐように位置しています。声帯とは声帯靱帯と声帯ヒダのことで、音声発声の中心的役割を担っています。
参考)https://tokushima-u.repo.nii.ac.jp/record/2009662/files/bdn_5_37.pdf
気管の構造は、医療従事者なら知っておくべき詳細な特徴があります。成人の気管は第6頸椎下縁の輪状軟骨の下端より始まり、第4-5胸椎の高さで左右の主気管支分岐部まで続きます。
参考)気管:解剖と機能
気管軟骨の数は16~20個で、幅3~4mmの馬蹄形(C字形)をしています。この軟骨は完全な輪ではなく、気管の円周の2/3~4/5を占め、後方部が欠けています。この後方の壁は膜性壁と呼ばれ、平滑筋と緻密な線維性結合組織で形成されています。
参考)Terminologia Anatomica(TA)に基づく…
気管軟骨は、特に吸息時に気管内腔が閉ざされないように保つ役割を果たします。軟骨性の支柱を欠く膜性壁には、気管の内腔を狭めたり過度の拡張を防ぐ平滑筋が存在します。
成人の気管の平均長さは約10~12cm(8.5cm~15cm)、直径は約2~2.5cm(17~19mm)です。これらの数値は、気管挿管や気管切開の臨床現場で重要な基準となります。
意外な事実として、気管軟骨の数は個人差があり、最大で26個に達することもあります。また、気管は外側から外膜によって覆われており、この構造全体の理解が呼吸器疾患の診断や治療に不可欠です。
上気道と下気道の境界を理解することは、臨床現場において極めて重要です。特に、輪状軟骨の下端(第6頸椎レベル)は、気管挿管や緊急気道確保の基準点となります。
外科的気道確保においては、輪状甲状関節の構造を理解することが不可欠です。輪状甲状関節は、両側輪状甲状関節を通過する直線を回転軸として回転し、前方で甲状軟骨と輪状軟骨弓の間の距離を減少させ、声帯緊張を高めます。
気管切開の手術では、第2〜第4気管軟骨の位置を確認し、輪状軟骨を損傷しないように注意が必要です。輪状軟骨は喉頭腔全周を囲む唯一の軟骨であり、損傷すると気道狭窄や声帯機能障害を引き起こす可能性があります。
成人男性で解剖学的死腔は約150mLで、これは口及び鼻から終末細気管支までの気道(上気道と下気道の合計)でガス交換に関与しない部分です。肺胞死腔と合わせて生理学的死腔と呼ばれ、肺胞死腔は生理学的死腔の20%以下となっています。
上気道と下気道の境界には、教科書にはあまり記載されていない意外な事実がいくつかあります。
第一に、輪状軟骨は人体で唯一、気道の全周を完全に囲む軟骨です。他の気管軟骨はC字形で後方が開いていますが、輪状軟骨だけは完全な輪状を形成しています。この構造が、喉頭と気管の明確な境界を形成し、気道が常に開いた状態を保つことを可能にしています。
第二に、声帯の層構造は組織学的に3層に分類されます。①カバー(上皮と粘膜固有層浅層)、②移行部(粘膜固有層中間層および深層)、③ボディ(声帯筋)の3つです。声帯振動は主にカバーが担い、この構造的理解が音声障害の診断や治療に不可欠です。
第三に、気管のC字形軟骨の後方の膜性壁は、食道が気管の直後を走行しているため、食べ物が通過する際に気管が圧迫されても潰れないようにする役割も果たしています。この解剖学的配置は、嚥下と呼吸の協調において重要な意味を持ちます。
第四に、喉頭軟骨の骨化は20〜30歳から始まりますが、個人差が大きく、加齢とともに気管挿管が困難になる一因となります。高齢者では軟骨が完全に骨化し、輪状軟骨や甲状軟骨が硬くなるため、気管挿管時の喉頭操作が困難になることがあります。
呼吸器系の上気道と下気道とは?~それぞれの役割~ - つばさ在宅クリニック西船橋
呼吸療法シリーズ「呼吸療法に必要な解剖生理①」 | CEじゃーなる
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