正常な血管より、実は攣縮した血管だけを狙って効くのがファスジルです。

ファスジルは化学名hexahydro-1-(5-isoquinolinesulfonyl)-1H-1,4-diazepine monohydrochloride hemihydrateという構造を持つ、蛋白リン酸化酵素阻害剤です。分子薬理学的研究は三重大学で行われ、合成は旭化成で実施され、1980年に日本で生まれた化合物です。
参考)http://j-ca.org/wp/wp-content/uploads/2016/04/5006_kinen5.pdf
つまり日本発のRhoキナーゼ阻害薬ということですね。
分子量は約160kDaのRhoキナーゼ(ROCK)を標的とし、その構造式からATP競合阻害という様式で作用します。この基本構造を理解しておくと、他のプロテインキナーゼ阻害薬との比較がしやすくなります。薬理学の教科書や添付文書PDFを併せて確認すると理解が深まります。
Fasudil for I.V. Infusionの詳細な添付文書情報はこちら(効能・用法用量・相互作用を網羅)
これがRhoキナーゼ活性亢進のメカニズムです。
ファスジルはこのRhoキナーゼをATPと競合的に阻害し、MLCPhの活性を回復させることで、収縮していた血管を弛緩させます。細胞内Ca2+濃度に依存しない収縮制御機構を標的にする点が、一般的なCa拮抗薬とは異なる大きな特徴です。
このメカニズムを理解する上で覚えておきたいのが、細胞内Ca拮抗作用に近い特殊な血管拡張作用も併せ持つという点です。摘出血管標本の実験では、Ca2+イオノフォアによる収縮に対し、通常のCa拮抗剤では弛緩しないケースでも、ファスジルなら弛緩することが確認されています。
ファスジルはRhoキナーゼ阻害以外にも、抗炎症作用や神経保護作用を持つことが薬学研究で明らかになっています。NADPHオキシダーゼを阻害してフリーラジカルの産生を抑制し、白血球の遊走も抑えることが報告されています。
脳虚血モデルの実験では、ファスジル投与群で好中球の指標であるMPOの増加が抑制され、梗塞範囲の減少とマヒ症状の軽減が確認されました。これはヒトの脳梗塞治療における脳保護作用の科学的根拠となっています。
つまり血管拡張だけでなく脳保護作用も持つということですね。
さらに血液粘度の正常化作用も報告されており、虚血によって上昇した血液粘度(平均5.31cPから6.05cPへの上昇)を用量依存的に低下させることが動物実験で示されています。これはアクチンの脱重合やtissue factorの産生抑制が関与していると考えられています。この多面的な作用機序を把握しておくと、なぜファスジルが脳血管攣縮だけでなく肺高血圧症や狭心症にも応用研究が進んでいるのか理解しやすくなります。
副作用リスクが低い点は臨床現場での安心材料です。
これは緑内障治療における新しい選択肢になり得るということです。
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