アトピー性皮膚炎は乳幼児期の病気というイメージが強いですが、実際には成人してからの発症や再発が増加傾向にあります。厚生労働省の調査によると、アトピー性皮膚炎の患者数は約170万人と推定され、この10年で約3倍に増加しています。
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大人のアトピー性皮膚炎は、遺伝的素因、皮膚バリア機能の低下、環境要因という3つの要素が複雑に重なることで発症します。特に20代から40代の働き盛り世代に多く見られ、症状が長期間続くことで日常生活や社会生活に大きな支障をきたすケースも少なくありません。
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アトピー性皮膚炎の発症には「アトピー素因」と呼ばれる遺伝的体質が深く関わっています。アトピー素因とは、アレルギー性疾患にかかりやすい体質のことで、以下のような特徴があります。
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特に重要なのが「フィラグリン遺伝子」の存在です。フィラグリンは皮膚の角層でバリア機能を担う重要なタンパク質で、この遺伝子に変異があると生まれつき皮膚バリア機能が低下した状態になります。
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研究によると、アトピー性皮膚炎患者の約15〜20%にフィラグリン遺伝子の変異が確認されており、この変異を持つ人はそうでない人に比べて発症リスクが約3倍高いことがわかっています。
ただし、遺伝的素因だけで発症が決まるわけではありません。アトピー素因を持っていても、環境要因が整わなければ症状が出ないケースも多く、逆に素因が弱くても強い環境刺激に長期間曝されることで発症することもあります。
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皮膚には外部の刺激や病原菌の侵入を防ぎ、体内の水分を保持する「バリア機能」が備わっています。アトピー性皮膚炎では、このバリア機能が低下することで様々な問題が引き起こされます。
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バリア機能が低下する主な要因:
皮膚が乾燥すると、角層の細胞間脂質(セラミドなど)が減少し、バリア機能がさらに損なわれます。この状態になると、わずかな刺激でも炎症を起こしやすい「敏感肌」の状態になり、アレルゲンが皮膚から侵入しやすくなります。
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アレルゲンが皮膚から侵入すると、免疫細胞(T細胞やマクロファージ)が反応してヒスタミンを放出します。ヒスタミンは血管を拡張させ、炎症とかゆみを引き起こします。このかゆみで掻いてしまうと、さらにバリア機能が損なわれるという悪循環が生じます。
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意外な事実として、近年の研究で「腸内環境の乱れ」が皮膚バリア機能に影響を与えることがわかってきました。腸内細菌叢のバランスが崩れると、全身の炎症反応が増強され、アトピー症状が悪化しやすくなります。加工食品や高脂肪食を多く摂る人は腸内環境が乱れやすく、アレルギー反応が強まることがあります。
大人のアトピー性皮膚炎では、環境要因が重要な発症・悪化因子となります。特に20代から40代は、就職、転職、結婚、出産、引越しなどのライフイベントが多く、生活環境の変化によってアレルゲンへの曝露量が変わることが発症の引き金になります。
主な環境アレルゲン:
都市部での大気汚染や、冷暖房による空気の乾燥も肌の状態に悪影響を及ぼします。特に冬季は湿度が低下しやすく、皮膚の乾燥が進行することでバリア機能がさらに低下します。
意外な環境要因として、「唾液、汗、髪の毛の接触」もかゆみを悪化させる刺激となります。また、化粧品や香料、金属(ニッケルなど)などの化学物質も敏感になった皮膚には刺激となり、症状を悪化させることがあります。
マラセチア(真菌)や黄色ブドウ球菌などの微生物も悪化要因となります。アトピー性皮膚炎患者の皮膚には黄色ブドウ球菌が通常より多く存在し、この細菌が産生する毒素が炎症を悪化させることがわかっています。
ストレスや不規則な生活習慣は、大人になってからのアトピー発症の大きな要因です。現代社会では、仕事や家庭でのストレス、睡眠不足、不規則な食生活などが慢性的に続き、免疫バランスを乱すことで発症リスクが高まります。
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ストレスが免疫系に与える影響:
睡眠不足は特に注意が必要です。睡眠中に皮膚は修復され、バリア機能が回復しますが、睡眠不足だとこの修復プロセスが十分に行われません。また、睡眠不足はストレスホルモンの分泌を増やし、かゆみを悪化させる悪循環が生じます。
喫煙や過度の飲酒もアトピー発症のリスク因子です。喫煙は皮膚の血行を悪化させ、ビタミンCの消耗を促進することでバリア機能を低下させます。アルコールは血管を拡張させ、炎症反応を増強するため、症状を悪化させることがあります。
不規則な食生活も問題です。加工食品や高脂肪食を多く摂ると、腸内環境が乱れて全身の炎症反応が増強されます。また、特定の食品添加物(保存料、着色料など)がアレルギー反応を誘発するケースもあります。
近年、注目されているのが「腸内環境と皮膚の状態の相関関係(腸皮相関)」です。これは、腸内細菌叢のバランスが皮膚の健康状態に直接影響を与えるという概念で、大人のアトピー性皮膚炎発症において重要な視点となります。
腸内環境が皮膚に影響を与えるメカニズム:
研究によると、アトピー性皮膚炎患者の腸内細菌叢は、健康な人に比べて多様性が低く、特定の菌種(ビフィズス菌や乳酸菌など)が減少していることが確認されています。
さらに意外な事実として、腸内環境の改善がアトピー症状の改善につながるケースが報告されています。プロバイオティクス(乳酸菌やビフィズス菌)の摂取や、食物繊維を多く摂ることで腸内環境を整えると、皮膚の炎症が軽減し、バリア機能が改善する可能性があります。
腸内環境を整えるための具体的な方法:
この腸皮相関の視点は、従来の皮膚科治療では見落とされがちなポイントであり、大人のアトピー性皮膚炎の発症と再発予防において重要なアプローチとなります。
薬物療法の種類:
保湿ケアは、バリア機能を回復させるために不可欠です。入浴後5分以内に保湿剤を塗ることで、水分を閉じ込め、乾燥を防ぐことができます。保湿剤は、セラミドやヒアルロン酸などの成分を含むものが効果的です。
予防策として:
これらの対策を継続的に実施することで、アトピー性皮膚炎の発症リスクを下げ、症状の悪化を防ぐことができます。
日本皮膚科学会 アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2023年版