あなたの病院、実は今も合法的にアスベストが残っている可能性があります。

アスベストの規制は、一度に完全禁止になったわけではありません。日本では1975年に「吹き付けアスベスト」の原則禁止から始まりました。
当時の規制対象は含有率5%を超えるものに限られており、多くの建材はそのまま使われ続けました。1995年にはクロシドライトとアモサイトという毒性の高い2種類が、含有率1%超で禁止されます。
つまり当初は「一部の危険物質だけ」を狙った規制だったわけです。
その後2004年に、白石綿を含む建材10品目が禁止対象になりました。規制は約30年かけて段階的に強化されたということですね。
古い病院や医療施設ほど、複数世代の規制をまたいで建てられている可能性がある点は覚えておきたいポイントです。
「アスベスト使用禁止はいつから」と検索すると、多くの記事で2006年(平成18年)9月1日が答えとして挙げられます。この日、含有率0.1%を超えるアスベスト製品の製造・輸入・譲渡・提供・使用が原則禁止されました。
参考)アスベスト(石綿)はいつから禁止された?健康被害の救済制度も…
厚生労働省の資料によると、この基準日以前に製造・輸入された在庫品についても、譲渡や使用が禁止されています。
参考)https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/sekimen/hourei/dl/hou07-281c.pdf
古い在庫だから大丈夫、というわけではありません。
さらに注意したいのは、ジョイントシートガスケットやグランドパッキンなど一部の工業製品は、安全上の理由で当分の間、例外的に禁止が猶予されていた点です。
病院の設備配管や医療機器の一部にも、こうした例外品が使われていた可能性があります。改修工事を検討する際は、設備担当者に建材リストの確認を依頼するのが確実です。
2006年の原則禁止のあとも、代替技術が確立していない一部製品(特殊なガスケットなど)には猶予期間が設けられていました。この猶予が完全に撤廃されたのが2012年(平成24年)3月です。
参考)アスベストの使用はいつから禁止?年代別の規制と建物所有者が今…
これでようやく、アスベストおよび0.1%超含有製品の製造・使用が例外なく禁止されました。
結論は「2006年原則禁止、2012年完全禁止」ということですね。
医療従事者にとって重要なのは、2012年以前に建設・改修された医療機関の設備には、猶予対象品が使われていた記録が残っている可能性があるという点です。建物の竣工図や設備仕様書を確認する習慣をつけておくと、後々の改修工事がスムーズになります。
アスベストが厳しく規制された最大の理由は、健康被害の深刻さにあります。悪性中皮腫、肺がん、石綿肺、びまん性胸膜肥厚が代表的な関連疾患です。
これらの病気の共通点は、発症までの潜伏期間が極端に長いことです。悪性中皮腫では平均30年から50年、肺がんや石綿肺でも15年から40年程度かかるとされています。
これは、はがき1枚を渡してから読まれるまでに数十年かかるようなイメージです。
医療従事者として患者の職業歴や住環境歴を問診する際、数十年前のアスベストばく露歴が現在の症状に結びつくケースがある点は意識しておきたいところです。中皮腫や石綿肺の患者を診る場合、労災保険や石綿健康被害救済制度の対象になるかどうかも、早期に案内できると患者の助けになります。
2022年4月1日から、建物の解体・改修工事を行う際にはアスベストの事前調査が法律で義務化されました。医療機関の増改築や設備更新もこの対象に含まれます。
さらに2023年10月1日からは、特定建築物石綿含有建材調査者などの資格を持つ者が調査を行うことが必須になりました。
無資格者による調査は法律違反になります。
事前調査結果の報告を怠った場合、30万円以下の罰金が科される可能性があります。除去作業の基準を守らなかった場合はさらに重く、3ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金という規定です。
病院という公共性の高い施設で法令違反が発覚すれば、罰金以上に信用面での損失が大きくなりかねません。改修工事を発注する際は、施工業者が有資格者を配置しているかを契約前にチェックリストで確認しておくと安心です。
厚生労働省が公開する石綿全面禁止の関係法令や猶予対象製品の詳細リストはこちら
建築年代別のアスベスト含有リスクや事前調査の具体的な進め方を詳しく解説した記事はこちら
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