保菌者に抗菌薬を使うと耐性菌が増えます。

アシネトバクター属菌に対する第一選択薬は、感受性が保たれている場合はカルバペネム系抗菌薬です。
イミペネムやメロペネムが代表的で、重症の敗血症や人工呼吸器関連肺炎で使用されます。
ただしカルバペネム耐性株の割合は施設によって異なり、米国の調査では分離株の3割以上がカルバペネム耐性だったという報告もあります。
参考)アシネトバクター感染症(3/3) │ KANSEN JOUR…
つまり感受性検査の結果を見るまで、経験的治療の選択が難しいということですね。
耐性が疑われる場合はコリスチンやスルバクタム配合剤、チゲサイクリンなどが代替候補になります。
これらは腎機能や副作用のモニタリングが必要な薬剤なので、投与量の確認には院内の感染制御チーム(ICT)との連携が有効です。
多剤耐性アシネトバクターの判定は、イミペネム・アミカシン・シプロフロキサシンの3剤に対する感受性試験で行われます。
参考)https://www.hosp.kagoshima-u.ac.jp/ict/bacteria/Acinetobacter.htm
具体的には、イミペネムのMICが16μg/ml以上、アミカシンが32μg/ml以上、シプロフロキサシンが4μg/ml以上であれば耐性と判定されます。
数値だけ見ても分かりにくいですが、これは検体を薄めた抗菌薬の中で菌が生き残るかどうかを段階的に測る検査です。
3条件すべてを満たして初めてMDRAと確定します。
一部の薬剤だけ耐性でも、MDRAの届出対象にはならない点に注意が必要です。
検査結果の見落としを防ぐには、細菌検査室からICTへの自動アラート運用を導入している施設も増えています。
アシネトバクター属菌は環境中に広く生息し、人工呼吸器や床、洗面台などの湿潤な環境からも検出されます。
健常者の皮膚、特に腋窩や会陰部にも常在していることがあり、必ずしも病原性が高いわけではありません。
免疫力が低下した患者や長期に広域抗菌薬を使用している患者では、日和見感染として肺炎や尿路感染症、カテーテル関連血流感染症を起こします。
厳しいところですね。
対策の基本は個室管理と接触予防策の徹底、そして不要な広域抗菌薬使用を避けることです。
14日以上広域抗菌薬を使う場合は、2週間に1回程度の監視培養を行う施設運用も推奨されています。
見落とされがちなのが、保菌と感染の区別です。
喀痰や尿からアシネトバクターが検出されても、それが感染症の起因菌とは限りません。
参考)https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-43-01.html
感染症法上の届出基準でも、無菌部位からの検出か、非無菌部位でも起因菌と判定された場合のみが対象とされています。
つまり検出=治療開始ではないということです。
不要な抗菌薬投与を避けることが、耐性菌拡大を防ぐ一番の近道になります。
行動の目安としては、培養結果が出た時点で主治医と検査室、ICTの3者で治療適応をカンファレンスで確認するという運用が現実的です。
意外と知られていませんが、アシネトバクターのカルバペネム耐性はOXA型カルバペネマーゼという酵素の産生によるものが主体です。
参考)アシネトバクター属菌の薬剤耐性機構と検査|国立健康危機管理研…
このOXA型酵素は、他のグラム陰性菌に見られるKPCやNDMとは異なる系統に属しており、検出用の遺伝子検査キットも菌種ごとに使い分ける必要があります。
いいことですね、というよりむしろ検査の手間が増える要因になっています。
耐性機構を理解しておくと、なぜ同じカルバペネム系でも施設によって耐性率が大きく違うのかが見えてきます。
遺伝子検査の結果まで待てない緊急時は、感受性ディスク法の阻止円の直径で暫定判断する運用も選択肢の一つです。
薬剤耐性アシネトバクター感染症の治療指針を詳しく解説しています。診断基準や届出の実務を確認したい方向けの一次資料です。
薬剤耐性アシネトバクター感染症の治療 - 国立健康危機管理研究機構
多剤耐性菌対策全般の考え方を厚生労働省がまとめた資料です。院内対策の全体像を把握したい場合に参考になります。
多剤耐性菌対策について - 厚生労働省
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