あなたの瞳孔不同判断、実は2割は正常です

アニソコリア(anisocoria)とは、左右の瞳孔の大きさに差がある状態を指す医療用語です。一般的には左右差が1mm以上ある場合を指し、1mm以下の差は生理的な範囲とされています。日本語では「瞳孔不同」、略して「アニソコ」とも呼ばれます。
参考)瞳孔不同(アニソコリア)
瞳孔の大きさは、虹彩にある瞳孔散大筋と瞳孔括約筋という2つの筋肉によって調整されています。これらの筋肉を支配する神経経路に異常が起きると、片方の瞳孔だけが正常に収縮・散大できなくなります。つまり神経か虹彩、どちらかの異常が原因ということですね。 nanosweb(https://www.nanosweb.org/files/Anisocoria(1).pdf)
臨床現場では脳出血や脳梗塞、脳腫瘍などの重篤な疾患のサインとして注目されがちです。一方で、健康な人にも一定の割合で見られる現象であることは意外と知られていません。この事実を知っておくと、過剰な緊急対応を避けられます。
参考)アニソコリー(anisocoria)|license lab…
アニソコリアの原因は大きく生理的なものと病的なものに分けられます。生理的アニソコリアは健康な個人の約2割に見られるとされ、はがき1枚分の左右差もない微小な違いです。この場合は特に治療の必要はありません。
病的な原因としては、頭部外傷、脳卒中、脳腫瘍、薬物の影響などが挙げられます。加えてホルネル症候群やAdie瞳孔といった特定の疾患でも瞳孔不同が生じます。緑内障の点眼薬が片眼だけに使用されることで、左右差が生じるケースもあります。
参考)302 Found
こうした薬剤性のケースを見落とすと、不要な精査につながり時間もコストもかかります。問診で点眼薬の使用歴を確認するだけで、無駄な検査を避けられる場合があるということですね。
最も注意すべきは、意識障害を伴う瞳孔不同です。この場合、脳がむくんで動眼神経を圧迫している可能性があり、非常に危険な状態を意味します。すぐに医師へ報告する必要があります。
参考)https://blog.goo.ne.jp/medical-dictionary/e/66fc1d3d48e14552b1a94be8502c5e35
一方、意識障害を伴わない局所的な動眼神経麻痺の場合は、頭部外傷や脳動脈瘤が神経を圧迫して起きていることがあります。脳動脈瘤によるものはクモ膜下出血につながる恐れがあるため、脳神経外科の受診が推奨されます。痛いところですが見逃せません。
頭痛や吐き気、めまい、複視といった症状を伴う場合も要注意のサインです。これらの随伴症状があるかどうかを、瞳孔所見とあわせて記録しておくと、医師への申し送りがスムーズになります。バイタルサイン測定シートに瞳孔所見の記入欄を設けておく運用も有効です。
対光反射とは、光を当てたときに瞳孔が収縮する反応のことです。暗所で瞳孔を開かせる神経に障害があると縮瞳が起こり、逆に瞳孔を縮める神経に障害があると散瞳が起こります。どちらの反応異常かで、原因の推測に役立ちます。 nanosweb(https://www.nanosweb.org/files/Anisocoria(1).pdf)
チェックの際はペンライトを使い、左右の瞳孔径をミリ単位で記録します。瞳孔径はおおよそ2mmから6mm程度の範囲で変化し、鉛筆の芯1本分ほどの違いが臨床的に意味を持ちます。この差が拡大傾向にあるかどうかも重要な観察ポイントです。
継続的な観察で変化の推移を追うことが基本です。経時的な記録があれば、症状の進行を客観的に医師へ伝えられます。
現場で瞳孔不同を発見した際、すぐに緊急コールをかけるべきか迷う場面は少なくありません。ここで重要なのが「新規発症か」「意識障害を伴うか」という2つの基準です。この2点さえ確認できれば、報告の優先度をある程度判断できます。
新規に生じた瞳孔不同で意識レベルの低下を伴う場合は、最優先で報告すべき状態です。一方、以前からの左右差で意識も清明であれば、生理的な範囲である可能性が高く、経過観察で問題ないケースが多いです。つまり「いつからか」「意識はどうか」の2点確認が原則です。
この判断基準をカルテの申し送り欄にテンプレート化しておくと、夜勤帯でも情報共有の抜け漏れを防げます。看護記録アプリのテンプレート機能を活用し、瞳孔所見の記載項目をあらかじめ設定しておくという方法もあります。
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