グルタミンを含む輸液を「万能な栄養剤」だと思っていませんか。実は国内市販のアミノ酸輸液にグルタミンは一切含まれていません。
参考)Chapter3 静脈栄養 2.9 アミノ酸製剤の種類と特徴…

アミノ酸輸液は大きく5系統に分かれます。①総合アミノ酸輸液、②侵襲時用アミノ酸輸液、③肝不全用アミノ酸輸液、④腎不全用アミノ酸輸液、⑤小児用アミノ酸輸液です。
たとえるなら、体格や状態に合わせて服のサイズを選ぶようなものです。同じ「服」でも、成人用と子供用ではまったく設計が違います。
総合アミノ酸輸液はFAO/WHO基準や人乳パターンに準拠し、長期処方向けにバランス設計されています。アミノ酸濃度は10〜12%、必須アミノ酸と非必須アミノ酸の比(E/N比)は約1です。
つまりバランス重視ということですね。代表製品はモリプロンF輸液やプロテアミン12注射液です。
侵襲時用アミノ酸輸液はBCAAが30〜36%と高く設計されています。アミパレン輸液やアミゼットB輸液、アミニック輸液が該当します。
これは手術後や熱傷など、体がダメージを受けた状態を想定した設計です。侵襲係数が高い病態ほど必要蛋白質量も増える点に注意が必要です。
肝不全用と腎不全用は名前が似ていますが、設計思想はまったく逆です。肝性脳症ではBCAAの血中濃度が低く、芳香族アミノ酸が高くなる特徴的なパターンを示します。
そのためFischer比(BCAA/芳香族アミノ酸比)が指標として使われます。アミノレバンはこのFischer処方に基づいて設計された製剤です。
モリヘパミンはアルギニンを増量し、メチオニン・チロシンを減量した輸液として開発されました。血中アンモニアを下げる目的があります。
一方、腎不全用アミノ酸輸液はネオアミユー輸液やキドミン輸液が代表例です。E/N比は2.6、BCAA含有量は42〜46%と非常に高く設定されています。
腎不全では蛋白質摂取制限により血中必須アミノ酸が低下しやすいためです。厳しいところですね。透析導入前の保存期腎不全患者に主に用いられます。
肝不全用と腎不全用を取り違えると、患者の病態を悪化させかねません。カルテ確認だけでなく、添付文書の適応症欄を必ず見比べる習慣をつけると安心です。
同じ「高カロリー輸液用総合アミノ酸製剤」に分類されても、薬価には大きな差があります。たとえばアミニック輸液200mLは403円ですが、アミゼットB輸液200mLは850円と倍以上です。
参考)高カロリー輸液用総合アミノ酸製剤の同効薬比較 - くすりすと
これは東京ドーム5個分の差、というような大きさの話ではありませんが、月単位で継続投与する患者では総コストに無視できない差が生まれます。プロテアミン12注射液200mLは741円です。
同一効能でも先発品と後発品で価格が違うことも覚えておきましょう。ハイ・プレアミン注-10%は後発品(加算対象)として63.00円という低価格帯に位置しています。
コスト管理を意識する場面→薬剤選定時の判断材料→院内採用薬リストや薬価比較サイトの活用、という流れで確認する習慣をつけると効率的です。日経メディカルの処方薬事典では成分・剤形が同じ製品同士の薬価を横並びで確認できます。
参考)高カロリー輸液用総合アミノ酸製剤注射液の薬一覧|日経メディカ…
多くの解説記事は製品分類の紹介で終わりますが、実務で差が出るのは窒素バランスの計算です。窒素バランスは「総窒素投与量−総窒素排泄量」で求められます。
正の値なら蛋白同化状態、負の値なら蛋白異化状態と判断できます。つまり患者の栄養状態を数値で可視化できるということです。
計算方法は2通りあります。尿中尿素窒素から総窒素排泄量を求める方法(総窒素排泄量=尿中尿素窒素×5/4)と、Blackburnらの簡易法(蛋白質投与量÷6.25−(尿中尿素窒素+4))です。
どちらの方法を使うかで判断結果が変わることもあります。それで大丈夫でしょうか?と疑問に思う方もいるでしょうが、施設のプロトコルに合わせて統一すれば問題ありません。
またNPC/N比(非蛋白エネルギーと窒素の比)も重要な指標です。異化亢進状態ではNPC/N比100〜150、腎不全では300〜500に設定します。
この比率を誤ると、せっかく投与したアミノ酸がエネルギー源として消費されてしまい、蛋白合成に使われません。結論は病態に応じた比率設定が必須ということです。
添付文書上、重大な副作用の記載がない製剤もありますが、禁忌は明確に存在します。アミノ酸代謝異常のある患者、肝性昏睡またはそのおそれのある患者、高窒素血症の患者、重篤な腎障害のある患者には投与できません。
妊婦については有益性投与、授乳婦については母乳栄養の有益性を考慮した判断が求められます。これは使えそうです、という安易な判断は禁物です。
グルタミンを含む輸液がないという冒頭の事実も、臨床上見落とされがちなポイントです。グルタミンは熱や光で分解しアンモニアを発生しやすく、国内製剤には配合されていません。
欧州ではグルタミンのDipeptideを使った製剤が市販されていますが、日本では別途経腸栄養剤などで補う必要があります。米国のSCCM/ASPENガイドラインでは熱傷・外傷・ICU患者へのグルタミン投与が記載されています。
院内でグルタミン強化が必要な場面→静脈栄養だけでは不足する栄養素の補完→経腸栄養剤や薬剤部への相談、という順で確認する流れをおすすめします。最終的には主治医と薬剤師のダブルチェックで対応するのが基本です。
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