あなたのその「消失」判定、実は誤診かもしれません。

座位でアキレス腱反射を評価する際、最も重要なのはベッド端に座らせて下腿を完全に垂らす姿勢です。膝を軽く曲げた状態で足を床につけず、力を抜いてもらうことが基本です。
参考)膝蓋腱反射・アキレス腱反射のやり方とは?下肢の腱反射検査の見…
力が入ったままだと、腱の伸展刺激が正確に伝わらず、反射が正常でも「低下」と誤って記録されてしまいます。
つまり脱力できているかの確認が最優先ということですね。
患者さんが緊張しやすい場合は、会話をしながら注意をそらす方法も臨床でよく使われます。この一手間だけで判定の精度が大きく変わるため、検査前のちょっとした声かけを習慣にしておくと安心です。
深部腱反射の記録は「消失(−)」「軽度低下(±)」「正常(+)」「やや亢進(++)」「亢進(+++)」「著明な亢進(++++)」の6段階が用いられます。多くの現場で「+か−」の2択で片づけられがちですが、これは正確な神経学的評価とは言えません。
参考)https://ameblo.jp/9512046/entry-12275570175.html
亢進は反射弓より上位の中枢神経系(錐体路)の障害を示唆し、減弱・消失は反射弓自体、つまり末梢神経や筋の障害を示します。
参考)反射(深部腱反射、表在反射)による神経局在診断<基礎編> -…
亢進と減弱では原因となる障害部位がまったく逆ということです。
この違いを誤解したまま記録を残すと、後の診断プロセスで大きな手戻りが生じる可能性があります。カルテ記載の際は「±」や「++」といった中間段階まで丁寧に残す習慣をつけておくと、他職種との情報共有もスムーズになります。
座位で反射が誘発されない場合、すぐに「消失」と判定するのは早計です。Jendrassik増強法(両手の指を組んで強く引き合ってもらう動作)を試し、それでも反応がなければ初めて消失と判定します。
この一手間を省略すると、実際には正常な反射を誤って消失と記録してしまうケースが少なくありません。
どういうことでしょうか?
つまり患者さんの緊張状態が反射抑制を招いていただけ、というオチが臨床では頻繁に起こるのです。特に不安が強い高齢患者や初診の方では、この増強法を組み合わせるだけで判定結果が変わることがあるため、必ず手順に組み込んでおきたいところです。
60歳を超えると、有髄神経・無髄神経ともに線維数が若年期の50〜70%程度まで減少することが確認されています。これは末梢神経の自然な変化であり、多くの場合病的な意味を持ちません。
加齢による軽度の反射減弱なら問題ありません。
はがき1枚分ほどの神経線維密度が年齢とともに薄くなっていくイメージを持つと分かりやすいでしょう。座位検査で高齢患者の反射がやや弱くても、それだけで神経疾患を疑うのではなく、左右差や他の神経学的所見と合わせて総合的に判断することが重要です。左右差さえ揃っていれば、加齢性変化として経過観察に回すという選択肢も現場ではよく取られています。
参考)深部腱反射とは?亢進・減弱を左右差や病的反射と合わせて読む
意外に知られていませんが、深部腱反射の消失・低下所見は交通事故の後遺障害等級認定(12級13号)の重要な判断材料にもなります。座位での検査結果が、患者さんの補償額を左右する法的な意味を持つケースがあるということです。
参考)深部腱反射は12級の後遺障害認定のポイント|交通事故の医療鑑…
これは使えそうです。
医療従事者としては、座位検査の記録を「診断のためだけ」と考えがちですが、実際には後の保険手続きや法的判断の根拠資料として扱われることがあります。記録の際は所見の有無だけでなく、左右差や検査時の患者の協力度合いまで具体的にカルテへ残しておくと、後々のトラブル回避につながります。座位・臥位どちらで検査したかを明記する習慣も、こうした場面では地味に役立ちます。
腱反射の評価基準や叩打角度について、年代別のデータを含めて詳しく解説されています
深部腱反射と病的反射を組み合わせた神経局在診断の考え方がまとめられています
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