感度29%、あなたの検査は見逃しの元です。

座位でのアキレス腱反射検査は、臨床現場で最もよく使われる方法です。患者さんにベッドの端に座ってもらい、下腿を自然に垂らします。足首は軽く背屈させ、アキレス腱をわずかに伸張させた状態を作ります。この状態でアキレス腱部を打腱器で軽く叩き、足関節の底屈反応や下腿三頭筋の収縮を確認します。
参考)膝蓋腱反射・アキレス腱反射のやり方とは?下肢の腱反射検査の見…
叩く強さは、名刺1枚分の厚みを腱に押し込むイメージで十分です。強く叩く必要はありません。
左右差を見るときは、必ず同じ肢位、同じ打鍵強度で比較することが重要です。片側だけ膝の角度が違うと、反応の強さも変わってしまいます。座位の姿勢が崩れていないか、都度チェックしましょう。
つまり座位検査は「姿勢の再現性」が命です。
座位以外にも、仰向け(仰臥位)で行う方法があります。仰向けでは膝と股関節を軽く曲げ、検者が上腕と体幹の間に患者さんの脚を軽く挟んで固定します。足関節を軽く背屈させてアキレス腱中央を叩打する点は座位と同じです。
体格や関節可動域によって、座位では脱力しづらい患者さんもいます。たとえば股関節が硬く、端座位で骨盤が後傾してしまう高齢者では、仰向けのほうが安定した反応を得やすいケースがあります。膝関節術後で座位保持自体がつらい患者さんにも仰向けは有効です。
体位選択は患者さんの状態に応じて柔軟に変えるのが基本です。どちらが優れているというより、脱力できる姿勢を優先する発想が大切です。
座位でアキレス腱反射が出にくい場合、まず脱力不足や腱テンションの調整不良を疑います。姿勢を整え、背屈角度をおよそ45度前後に調整し直すだけで反応が出ることも少なくありません。
それでも反応が乏しいときは、ジェンドラッシク法などの増強操作を使います。患者さんに両手を胸の前で組んでもらい、指を引っ張り合うように力を入れてもらった状態で打鍵する方法です。この場合「通常では出にくいが、増強すると出る」という情報として記録します。
増強しても出ない場合はどうなるんでしょう?その場合はS1神経根や末梢神経の障害を疑う材料の一つとして扱いますが、これだけで確定診断はできません。腱反射の記録テンプレートやチーム内での略記ルールを整えておくアプリやチェックリストを使うと、判定のブレを減らしやすくなります。
判定は0から4+のスコアで表し、0は消失、1+は減弱、2+は正常、3+は亢進、4+は著明亢進(クローヌス)として扱います。この絶対値だけでなく、左右差が1段階以上あるか、誘発条件が必要だったかも合わせて記録することが原則です。
たとえば通常条件で1+だが増強法で2+に上がる場合、「AJ 1+/4→2+/4(増強+)」のように順番を守って記録します。記録が揺れると、後で振り返ったときに変化なのか誤差なのか判断できなくなります。
記録の統一が現場の質を決めるということですね。院内で記録様式をそろえておくと、カンファレンスでの共有もスムーズになります。
多くの医療従事者は「アキレス腱反射が正常に出れば、神経根障害の心配はない」と考えがちです。しかし腰椎神経根障害に対する2013年のメタアナリシスでは、感度は29%、特異度は78%、陽性尤度比1.26、陰性尤度比0.8と報告されています。
感度29%というのは、100人中およそ29人しか正しく異常を検出できないという数字です。野球で3割バッターがヒーローになるレベルの低さだと考えると、反射単独での判断がいかに心もとないかがイメージしやすいでしょう。
一方で糖尿病性末梢神経障害では逆に感度が高く、特異度が低くなる傾向が報告されています。つまり何を疑って検査しているかによって、同じ「反射消失」という所見の意味が変わるということですね。
これは意外ですね。反射が正常に出ていても、神経根障害の可能性を十分に低く見積もれるわけではありません。だからこそMMT、知覚検査、SLRやFNSなどの誘発テストと組み合わせて、所見の方向性が一致するかを確認する姿勢が欠かせません。
腰椎神経根障害での感度・特異度の詳細な出典や、糖尿病性末梢神経障害との読み方の違いはこちらで確認できます。
上肢・下肢DTRの体位づくりや打鍵角度、記録テンプレートを一気通貫で整理した資料はこちらです。
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