
アカシジアの原因薬として最も多く報告されているのは抗精神病薬です。ハロペリドールのような定型抗精神病薬では、投与開始や増量から数時間〜2週間以内に発症するケースが典型的です。
参考)https://www.jmedj.co.jp/blogs/product/product_17997
発症率は定型抗精神病薬で20〜40%にのぼるという報告もあります。これはおおよそ患者3〜5人に1人という高さです。かなりの頻度ですね。
参考)https://www.jmedj.co.jp/premium/treatment/2017/d081002/
慢性化・遅発性のアカシジアでも発症率は30%程度とされています。つまり長期投与している患者でも油断はできないということです。
問診では「そわそわして落ち着かない」「下肢がムズムズする」といった訴えに注意しましょう。この段階で薬剤性を疑えるかどうかが、その後の対応スピードを左右します。
非定型抗精神病薬だから安全、というのは正しくありません。リスペリドンやブロナンセリン、アリピプラゾールでもアカシジアは生じます。
特にアリピプラゾール(エビリファイ)は、ドパミン部分アゴニストでパーキンソン症状が少ないとされる薬剤です。それにもかかわらず、少量投与でもアカシジアを起こすことが知られています。
参考)https://ameblo.jp/shiva-myth/entry-12608604321.html
これは単純なD2受容体阻害だけでなく、ドパミンやセロトニンなど複数の神経伝達系のバランスの乱れが関与していると考えられています。SSRIなどの抗うつ薬でも同様の機序が指摘されています。
「新しい薬=副作用が少ない」という思い込みは危険です。薬剤選択の際は、クエチアピンやオランザピンが比較的アカシジアの発現が少ないとされる点も参考になります。
精神科領域の薬だけがアカシジアの原因薬だと考えていませんか。実はナウゼリン(ドンペリドン)やプリンペラン(メトクロプラミド)といった吐き気止め・胃腸薬でも発症例が報告されています。
これらは内科や外科、消化器科など幅広い診療科で日常的に処方される薬です。精神科以外の現場で見落とされやすいのが実情です。
あまり知られていませんが、リチウムによるアカシジアの報告例もあります。躁うつ病治療中の患者でそわそわ感を訴えた場合、リチウムも鑑別に入れる必要があるということです。
多科にまたがる薬剤性の可能性を想定しておくことが基本です。院内での薬剤カンファレンスや、電子カルテの併用薬アラート機能を確認しておくと見落としを減らせます。
原因薬が疑われる場合、まず薬歴と服用状況の確認が必要です。減量・中止、他剤への置換、処方の単純化を検討するのが基本的な流れです。
急性期で苦痛が強い場合は、ベンゾジアゼピン系薬剤(クロナゼパムやジアゼパムなど)を用いることがあります。錐体外路症状を伴う場合は中枢性抗コリン薬(ビペリデン、トリヘキシフェニジルなど)を選択します。
治療薬としてはこのほか、ベータ遮断薬(プロプラノロールなど)の有効性も確認されています。クロニジンやミルタザピンなども症状緩和に働くとされています。
対症療法だけに頼らず原因薬の見直しを優先するのが原則です。院内の副作用報告システムやPMDAの医薬品副作用データベースを併用すると、対応の妥当性を後から検証しやすくなります。
厚生労働省による重篤副作用疾患別対応マニュアルです。原因薬剤の分類や初期対応の目安が詳しく整理されています。
原因薬を中止すれば必ず改善する、というのも実は正確ではありません。パーキンソン病治療薬や抗コリン薬を減量・中止した際に発症する「離脱性アカシジア」も存在します。
また、原因薬の投与から3カ月以上経過してから出現する「遅発性アカシジア」もあります。時間差で発症するということですね。
見落とされがちなのが、血清鉄の低下や糖尿病がアカシジアの危険因子になっている点です。薬剤だけでなく患者の全身状態も評価対象になるということです。
妊娠や脳炎後遺症、末期腎不全(透析患者)に伴う非薬剤性のアカシジアも稀に存在します。頻度は高くありませんが、薬剤性と決めつけず鑑別の視野に入れておくと安心です。
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